ブログトップ

読書日記h1

huutyann1.exblog.jp

本が好きなことの幸せ

<   2014年 02月 ( 1 )   > この月の画像一覧


これは著者石田衣良が「逝年」のプロローグ位に書いている言葉をそのまま引用しました。
 

   花が枯れていく。
   その過程をゆっくりと間近に見つめたことはあるだろうか。
   日々の花のうつくしさは、磨り減っていく。
   柔らかだった花びらがしおれ、茶色のシミがうき、カサカサに乾いていく。
   空を指していた花芯はうなだれ、先を丸めてしまう。
   死は花が枯れるのによく似ている。それが僕にはよくわかった。
   花の美しさが消えていくように、死はその人をその人らしくしていた命の力を、少しずつ奪っていくのだ。
   それは決して反転させることができない絶対的な変化である。
   その人がゆっくりと生の世界を離れ、死に近づいていく。
   それを数ヶ月にもわたり、手の届く距離で見つめていたのだ。
   僕は死の秘密を見つけた。それはとても単純なことだった。
   死は恐るべきものではなく、僕たちのすぐそばにあるとても親しいものだ。
   音もなく降る春の雨の最初のひと滴や眠っている頬に滑る愛しい人の指先のように、優しく喜ばしく
   ひとの心を慰めてくれるものなのだ。
   その人の「死」を共に生きたことで僕は以前よりずっと強くなった。
   いつかその時が来ても、久しぶりに会う友人のようにシを迎えられるように思う。
   
   
[PR]
by huutyann1 | 2014-02-28 18:10 | Comments(0)