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「死の医学」への序章  柳田邦男

 
 国立千葉病院の精神神経科医、西川喜作氏が二年七ヶ月にわたる癌との戦いの末、世を去 った。氏に「死の医学」について書くときは、役立てて欲しいといわれ、氏の闘病記・死に到る  心の動き・氏の考えをまとめたものである。
 死にゆく人に対して、医師が患者に接する時間が余りにも短い。
 1人の患者さんに三分くらいしか接する時間が無い。
 医師はデータを出すために診察する。
 それはどういう患者さんを何百例見て、どういう治療をしたら何パーセント良くなったと言う   データである。
 患者さんの側に居て、その心を掴み病を治していくには程遠い。
 
 告知とは?
 単に病名を告げるだけで、あとは患者まかせというのではなく、患者本人に人生を真剣に
 考えさせ、残された時間をよりよく生きる道を探る機会を与えるものでなくてはならない。
 多くの人にとって真実を知ることは、一人では耐えられない程の苦悩を背負うことになるから
 医師・看護師・家族による支えが必要になる。
 つまり告知とケアは一体にならなければならない。

 この世に残すものがあると、死の恐怖の救いになると西川医師は言った。
 そしてそれは仕事であり、子どもであると。
 肉親の愛・身近な人の愛が死の恐怖を克服させ、又生きるエネルギーを与える。
 
 私はイギリスにおけるターミナルケアのことを思い出していた。
 ホスピスでは例え、死に行く人が言葉を口にしなくなっても、ベッドを囲む家族や医師スタッフ は、最後まで患者が聞いていると言う前提に立って、患者に絶えず話しかける口調で
 会話を続けるようにするのである。
 何故その様にするかと言うと、奇跡的に意識を取り戻した患者の話から、臨死患者の中には
 外見上は殆ど感覚も意識も失ったように見えても、実は周りの会話を聞いており、ただ
 意識を言葉にして話すことが出来なくなっているだけだ、という場合があることがわかった
 からである。とすれば最後の最も大切な瞬間に死に行く人に伝えるべきことがあるならば
 語りかけの努力を怠るべきではない。
 私はそういう思いを込めて、西川医師に「先生、原稿が出来ました。」を繰り返した。
# by huutyann1 | 2008-08-22 10:25

異邦人  カミユ

「母親の葬儀で涙を流さない人間は、全てこの社会で死刑を宣告される恐れがある、という意味は、お芝居をしないと彼が暮らす社会では、異邦人として扱われるより他はないということである。ムルソーは何故演技をしなかったか、それは彼が嘘をつくことを拒否したからだ。嘘をつくという意味は、無いことを言うだけでなく、あること以上のことを言ったり、感じること以上のことを言ったりすることだ。しかし、生活を混乱させないために、われわれは毎日嘘をつく。
ムルソーは外見から見たところと違って、生活を単純化させようとしない。
ムルソーは人間のくずではない。彼は絶対と真理に対する情熱に燃え、
影を残さぬ太陽を愛する人間である。彼が問題とする真理は、存在することと、感じることの真理である。それはまだ否定的ではあるが、これなくしては、自己も世界も、征服することは出来ないであろう......」以上はカミユが英語版に寄せた自序より。
 
ムルソーは否定的で虚無的な人間に見える。しかし彼は一つの真理のために死ぬことを承諾したのである。人間とは無意味な存在であり、全てが無償である、という命題は、到達点ではなく出発点であることを知らなくてはならない。039.gif
# by huutyann1 | 2008-07-28 19:58

アメイジンググレイス  小川竜生

葬儀は彼女の希望で、彼女の生まれ育った街である、横浜の教会で営まれた。
教会にパオプオルガンの音色が響き、教会に集まってくれた彼女の友達の中の、ロックミュージシャンの歌う「アメイジンググレイス」が哀愁を深くした。
彼は生きることへの喜びと悲しみが刻み込まれた黒人霊歌として、古くから歌いつがれてきた
その歌を涙ながらに聴いた。
# by huutyann1 | 2008-07-08 20:36

王妃の館

王妃の館のスイートルームに泊まり、パリを10日間楽しむツアーに参加した人たちの話。
ツアー客金沢貫一の言葉「私のいき方。一瞬を大切にすること。未来を望まない。過去に拘らない。自分が今あることの一瞬を、握った宝石のように大切にすること。」

ヴェルサイユ宮殿はルイ14世の「有史以来最も壮大、かつ豪華なるものを」と言う意思によって50年の歳月と膨大なお金をかけて造営された大宮殿である。
ヴェルサイユを訪れる観光客は、宮殿の正面に立った途端ただただ、仰天する。
# by huutyann1 | 2008-07-08 20:24

老いの楽しみ  沢村貞子

夫82歳、妻85歳の老夫婦。
この長生きの幸運が明日もあさっても.......来年も再来年もずっと続くはずは無い。
やがてどちらかがかけると思うと、今の毎日がもったいないような気がして、何かにつけ言葉を交わす。
気をつけなければいけないのはお互いに相手の弱点に触れないこと。
例えば年とともに見苦しくなる顔かたちとか、日ごとに増える物忘れなど気がついても口にしない。
うっかりするとつまらないことで、大切な相棒を傷つけてしまうことがある。
友人の多い人は皆豊かな顔をしている。
親友と呼べる相手を持つ人はとりわけ幸せである。
全ての欲を離れて信じあう友情の美しいこと。
その貴重な結びつきを長く続けていくためには、お互いの深いいたわりが大切。
相手の話を良く聞いてあげる。
美しく生きるなんてとんでもない話。
そこに鏡がある。掃除をしながらひょいと見ると、あのよたよた歩きしているの、私?
こんなのあり?相手に気の毒だから起きたらすぐに髪を整えて化粧水をつける。
口紅もちゃんと。
でも塗りまくったら絶対駄目。年寄りには。
# by huutyann1 | 2008-06-09 08:04


本が好きなことの幸せ


by huutyann1

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